温泉研究・宿への応援メッセージ ~ 新潟県・村杉温泉「風雅の宿 長生館」

長生館露天風呂
越後随一の長生館自慢の1000坪を誇る庭園大露天風呂

温泉学会副会長  弁護士 大川哲次

1.(五頭温泉郷とは)

 新潟県北東部に連なる五頭山。今から1200年以上前の大同4年(809年)、この地が越後国と呼ばれ始めていた頃、弘法大師36才の時に五頭山の五つの峰に五社大権現として仏像を安置し、五頭の本尊としたと言い伝わる。そして大師が麓の地を錫(しゃく)杖(じょう)で突いたところ、温泉が湧き出したのが五頭温泉郷の始まりとされる。五頭温泉郷は、県立自然公園の五頭山麓の西方に位置し、北から出湯、今板、村杉の3つの温泉地の総称。2016年全国で93番目の国民保養温泉の指定を受けた。また2012年、2014年、2015年の3回にわたり新潟県観光地満足度調査で総合満足度第1位を獲得した。同温泉郷は、五頭山を背にして美しい田園風景が広がり、日本の原風景が残る自然豊かな温泉郷だ。

2.(五頭温泉郷の中心の村杉温泉)

五頭温泉郷の一つの村杉温泉は、古く建武2年(1335年)足利家の武将であった荒木正高が戦乱を逃れてこの地に着き、薬師如来のお告げによって湧き出る泉(温泉)を発見したと言い伝わる。温泉街にある石段の上には源泉「薬師乃湯」、そして正高が建てた「薬師堂」が今に残る。「村杉」と言う地名は、薬師堂へと続く道に、仏様の恩に報いるために杉や松を植えたことから名付けられた。1914年(大正3年)になって、村杉の湯にラジウムが多く含まれていることが発見された。それ以降日本五大ラジウム温泉地の一つとして、「杖いらずの湯」と称され、新潟の奥座敷的な湯冶場として発展。今は、度重なる新潟地震や水害の発生、そして平成以降の不況の影響を受け、もとの静かで落ち着いた温泉地に戻っている。村杉温泉には、古くある薬師乃湯1号井と2号井、そして2001年(平成13年)に発見された薬師乃湯3号井の3つの源泉が存在。自然湧出の1号井は同温泉内の飲泉と共同浴場「薬師乃湯」に、同じく自然湧出の2号井は「薬師の足湯」に利用されている。堀削自噴で湧出量毎分510ℓを誇る3号井は、7軒の宿の浴用として利用。この温泉の特徴は、入浴することで効果が得られるだけでなく、飲泉そして何よりも身体(ラドン)を鼻や口から吸い込んでの効果が一番大きいとされる。古くから「子宝の湯」「痛風の湯」「万病の湯」と言われてきたのもうなずける。

3.(風雅を味わう宿の長生館の数々の魅力)

村杉温泉の中にあって、創業明治元年(1868年)、古くから相馬御風、野口雨情、近衛文磨など多くの文化人、墨客らに愛されてきたのが、老舗旅館「長生館」だ。今は客室27室(収容人員160名)、越後随一の1000坪の庭園大露天風呂と4000坪の自然の大庭園が自慢の新潟県内を代表する温泉宿だ。私とこの宿との付き合いは古い。私は大の食べ歩き好きで、40年近くも前からグルメ仲間30名ほどを集めて「大阪まんぷく会」を立ちあげ、京阪神の美味しい店の食べ歩きを続けている。その会の特別編として今から約25年前に新潟を訪れ、宿泊してグルメを楽しんだのが長生館であった。私は、すぐにこの宿が大いに気に入り、それ以来15回ほど訪れている。1979年(昭和54年)から代表者兼女将を続け、今は大女将としてこの宿を切り盛りする荒木紀子さんとは特に親しい付き合い。長生館のコンセプトは、「お客様へ満足を提供し、お客様に信頼され続けられる宿を目指すこと」。この宿の魅力の1つ目は、日本でも有数のラジウム温泉で、入浴や飲泉、そして気体(ラドン)を鼻や口から吸い込むことで多くの効能が得られること。健康・長寿の温泉として広く知られる。浴場は、男女別の大浴場と約1000坪の庭園大露天風呂(男性用は「白帝」、女性用は「彩雲」と称する)を備え、大自然と一体となって入浴することができる。他に風情豊かな「茜(あかね)瓦(がわら)の湯」、「木里(きり)の寝湯」、「森の癒し湯」の3つの茶室風貸切風呂も。2つ目の魅力は、五頭の自然をあるがままに映し出す約4000坪の庭園を設けていること。四季の移り変わる光景を客室や館内の至る所から真近に楽しむことができる。3つ目の魅力は、新潟の旬の山の恵みと海の恵みを素材とした日替わりの山海和食会席膳をおいしくいただけること。私が3年前の雪の降る真冬に訪ねた日にいただいた夕食は、名物の五頭山麗牛乳当富(豆腐)・旬菜盛り・村杉温泉伝統料理鯉の飴煮・海と川の地魚4種盛り・鱈(たら)ソバの実蒸・厳選和牛のラジウム源泉蒸し・地元笹神産コシヒカリなど大満足の12種の料理の数々であった。4つ目の魅力は、自分の好みと予算に応じて27の客室から部屋を選べること。その中で一客一亭の持てなしを心ゆくまで味わえる離れ「五頭緑水庵」と「松濤亭」も。5つ目の魅力は、荒木紀子大女将、その長男の荒木善紀社長と咲子女将、そして宿のスタッフの方たちのいつも笑顔で接する素朴で心のこもった接客を受けられることである。荒木社長は、「幸せの創造を理念に、お客様はもちろん、社員、その家族、そして社会に幸せを提供できる宿づくりを目指していきたい。」と話されていた。

(写真・文/大川哲次)温泉学会温泉研究/応援メッセージ特集

温泉のプロフィール

所 在 地  新潟県阿賀野市村杉温泉4632-8

電   話  0250-66-2111

宿泊料金  1万7000円(税別)~

(1泊2食)  (但し、休前日2万1000円(税別)~)

日帰り入浴  営業時間 午前11時~午後2時

入浴料金 大人1000円、小人600円

定 休 日  なし

交   通 ・JR新潟駅―→宿(無料送迎バス約45分・要予約)

       JR水原駅―→宿(無料送迎バス約20分・要予約)

・磐越自動車道安田I.C―→宿(車で約15分)

著者プロフィール

大川 哲次
大川 哲次温泉学会副会長/弁護士
おおかわ てつじ

三重県尾鷲市生まれ。
弁護士(よつば法律事務所所長)
大阪弁護士会副会長(1998) 1988年より受刑者や非行少年に対する改善更生のための篤志面接委員活動を行い、長年の篤志面接委員の活動により2016年藍綬褒章受章。そのかたわら日本百名山全山登頂、日本の温泉1981入湯、海外103ヶ国訪問済み。記録更新中。日本ペンクラブ会員・日本旅のペンクラブ関西部代表理事・日本山岳会会員・大阪ユネスコ協会理事・島根県奥出雲町特別顧問・大阪奈良県人会理事など。


2020.2.6現在