温泉研究No.17 宿への応援メッセージ ~ 鹿児島県・霧島温泉「旅行人山荘」~

温泉学会副会長  大川 哲次

1.

 「霧島」は、昭和9年日本で最初の国立公園に指定され、平成24年3月には錦江湾奥の姶良カルデラを加えて、「霧島錦江湾国立公園」として生まれ変わった。
ここの国立公園の特徴としては、巨大カルデラ噴火とその後の火山活動によって形成された特色のある地形やミヤマキリシマを代表とする多種多様な植生、そして豊富で良質な温泉群が挙げられる。
温泉学会は、平成26年9月霧島の国立公園指定80周年の記念も兼ねて、霧島温泉郷で第19回温泉学会全国大会を開催。

2.

「霧島温泉」は、日本百名山の一つの霧島山の南麗にあって、新湯、硫黄谷、丸尾などの9つの温泉を合わせた温泉郷。良質で効能の高い天然温泉として国民保養温泉に指定。また、別府温泉郷と並び、温泉の代表泉質10種類のうちラジウム泉を除いた9種類が揃っている全国でも有数の温泉の宝庫だ。さらに山から海まで変化に富む自然環境と南国でも快適さを得られる高原型気候にも恵まれた魅力一杯の温泉地である。

3.

「旅行人山荘」は、霧島温泉郷の中心にある丸尾温泉の温泉街から少し離れた見晴らしのいい標高700mの高台に立つ。周りは約5万坪の専用散策林に囲まれた素晴らしい自然環境の中に位置。「丸尾温泉」の歴史は古い。文政2年(1819年)狩人の横尾権太が狩猟中に発見したと言い伝えられる。その後、地元の人の湯治場や軍人、名士の別荘地として利用された。40年代初めからは新婚旅行ブームも重なり、観光温泉地として急速に発展。旅行人山荘は、大正6年にその前身の丸尾温泉旅館として初代が丸尾温泉の中心地で創業。昭和43年に霧島プリンスホテルとして2代目が現在の場所に新たにホテルを建築して、主に新婚旅行用ホテルとして再オープン。その後の平成9年に「旅行人山荘」と宿名を変え、平成10年からは蔵前壮一さんが3代目代表としてその経営を引き継いぎ、今はその長男の蔵前仁宣さんが4代目代表を務める。

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「旅行人山荘」玄関前で蔵前壮一代表(後列一番右側)と今は亡き
2代目竹下賢会長も一緒の温泉学会理事のメンバー

旅行人山荘の宿の基本コンセプトは、「旅行人山荘でのひとときがお客様の幸せなひとときであること」。
この宿には、私の好きな10の良さがある。まず1つ目は、自然湧出の源泉掛け流しで、2種類の良質の天然温泉に入湯できること。一種類目は文政2年に発見された単純温泉(低張性・中性・高温泉)。泉温62,4℃、PH値6,8の肌に優しくて多種多様な成分を含む。大浴場(錦江の湯と大隅の湯)の内湯と貸切露天風呂のもみじの湯・ひのきの湯に使用。もう一種類は硫黄泉。泉温65,3℃、PH値5,3で、天候や気温などで温泉の色が変化するのが特徴。皮膚から吸収されて、血液の循環を良くする。大浴場の露天風呂と貸切露天風呂の赤松の湯・鹿の湯に使用。他に、歩いて行く林の中のこの宿自慢の貸切露天風呂(宿泊者は無料)もある。「赤松の湯」・「もみじの湯」・「ひのきの湯」・「鹿の湯」があって、大自然の中で美しい新緑や紅葉を見ながらゆっくり入浴できる。足湯「龍石の湯」も。2つ目は、霧島の高台の林に囲まれた約5万坪の敷地の中で、森林浴、散策などを楽しみながら四季折々の移り変わる自然を存分に味わえること。3つ目は、客室、レストラン、風呂などから天気の良い日には噴煙の上がる桜島、錦江湾、遠く開聞岳などの素晴らしい景色を見られること。4つ目は、温泉街から離れた高台の一軒家の宿で静かにゆっくりと過ごせること。5つ目は、旬の野菜、山菜などの食材や地元産の黒豚や赤鶏を使った四季折々の会席風料理を美味しく味わえること。黒豚の入った大隅鍋は、この宿の名物料理だ。6つ目は、眺めのいい和室、眺めのいい和洋室、ベランダ付き洋室、露天風呂付き洋室、露天風呂付バリアフリー和洋室の5つのタイプの客室から自分の好みや予算に応じて部屋を選べること。7つ目は、真心のこもった素材で気持ちのよい接客を受けられること。蔵前さんの日々の指導や専門講師を呼んでの研修の実施などによってより一層のサービスの向上を目指す。8つ目は、館内にはバルコニーや休憩室があって、ゆっくりと落ち着いた自分だけの時間や空間を楽しめること。9つ目は、館内の旅行人ギャラリーを、ジャンルを問わないアート表現の場として開放し、そこでミニコンサート、絵画展、写真展などの各種イベントを楽しめること。そしてさらにもう一つの良さは、宿への入口から玄関に至るまでの道中に設置されている与謝野晶子、山口誓子、野口雨情、若山牧水、斉藤茂吉など有名歌人のよんだ30の歌碑を楽しめることだ。
  この宿の会長で温泉学会理事の蔵前壮一さんは、「これからも旅行人山荘の3つの理念である①恵まれた環境に感謝し、自然を大切にする、②お客様に感謝し、親切な心を大事にすること、③宿はお客様に幸せと癒しを感じていただく社会貢献的な存在。お客様からの信頼を得られることを第一に、より一層愛される温泉宿を目指していきたい。」と話されていた。

5.

霧島温泉もコロナによる大きな経済的被害を受けている。旅行人山荘を応援するため、行くことが可能になれば是非訪れてやってほしい出色の宿である。


お宿のデータ

旅行人山荘
所在地:鹿児島県霧島市牧園町高千穂字龍石3865
電話番号:0995-78-2831
宿泊料金:9800円~(消費税別)(2名1室)
     (但し、休前日は2000円プラス)

著者プロフィール

大川 哲次
大川 哲次温泉学会副会長/弁護士
おおかわ てつじ

三重県尾鷲市生まれ。
弁護士(よつば法律事務所所長)
大阪弁護士会副会長(1998) 1988年より受刑者や非行少年に対する改善更生のための篤志面接委員活動を行い、長年の篤志面接委員の活動により2016年藍綬褒章受章。そのかたわら日本百名山全山登頂、日本の温泉1981入湯、海外103ヶ国訪問済み。記録更新中。日本ペンクラブ会員・日本旅のペンクラブ関西部代表理事・日本山岳会会員・大阪ユネスコ協会理事・島根県奥出雲町特別顧問・大阪奈良県人会理事など。


2020.2.6現在